8月30日の不協和音
私には多くを語るだけの文章力はありませんし、そもそもあの日の衝撃を言葉にすることがとても難しいのですが、今まで見たことがなかったような、とんでもないものを見たなと。あの会場にいたすべての人がそう思ったはずです。
それはアンコール後にありました。
本編はかとしのステージからの落下とかヒヤッとするところもありましたけど、ずーみんの復帰やひらがなも含めた全員のパフォーマンスなど、賑やかですごく楽しい感じで終わったんです。まぁ、全国ツアーのファイナルを締めくくるいいライブだったなと、そう思ったんです。
ところが会場はまだ暗転したままだったんで、“お、これはファイナルだからWアンコール発動かな”と、とワクワクしながら再開を待ってました。
そこでかかったイントロが、
『自分の棺』
ツアーでいっぺんも披露してこなかった平手友梨奈のソロ曲『自分の棺』をここで持ってきやがったんです。
なんつーか、テンションどん底に叩き落す曲ですよ。これw
しかも松明なんか立てられて、ぐーーっとステージに引き寄せられる雰囲気作ってるんですよ。
例えるならアロマ炊いてるみたいな。視覚のアロマですね。もう雰囲気に呑みこまれてしまう。
「え〜」とか「あれ〜」とか、否定すらも受け付けられない感じ。とにかくその場にいた人が肯定せざるを得ない雰囲気で『自分の棺』を見せつけられました。
“これから何が起こるんだろう”
不安とともにもう見守るしかないというか受け入れるしかありませんでした。ここまで来たら。
そしたらイヤーな音とともに出て来るメンバー。その衣装は紛れもなくあの青い『不協和音』。
“不協和音だ!”
まるでお笑いウルトラクイズでダチョウ倶楽部が発していた
“キラーカーンだ!!”のそれに近い謎のテンションで一気に高まってしまったんですけど、ステージ見てるとそれどころじゃないんですよ。
なんか灰を投げつけて汚し合ったり、布を引きちぎったり、メンバーたちがもうやり場のない怒りをぶつけてる感じなんですよ。
そんなメンバーたちがいる中で、中心に出てきたてちがいきなり、いきなりですよ、
パーーーン!!
と撃たれてしまう。
鮮血にまみれ、凶弾に倒れたてちがこれからどうなってしまうのか ――というところであのイントロ…
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
満を持して、ファイナルで、ついにやりやがった不協和音!
ここで客のボルテージは一気に高まってしまって、まるで集団催眠にかかったような異常な盛り上がりでした。
そして最後オーロラに一瞬映し出されたてちの表情。。
血塗られたてちがニヤっと笑った瞬間は、忘れたくても忘れられない、深層心理に訴えかけるインパクトがありました。
なんかすごいものを見せつけられてしまって、見終わった後はしばらくぐったりしてしまいました。
例えようのない衝撃に、これはもうアイドルの領域を超えたんじゃないかとすら思いましたし、正直「怖い」とさえ思ってしまいました。
それはこのステージをやってのけた欅坂のメンバーへの畏怖と、
閉鎖的な空間にあって、人々がのせられていってしまう雰囲気づくりへの恐怖とでも言うんでしょうかね。
もしあの場でてちが「ツボ買えーーー!」と言えばツボを買ったろうし、
「戦えーーー!!」と言ったら戦争が始まってたかもしれません。
そんな全体主義の扇動効果を見てしまったような気がして、なんかコエ〜と思ってしまったんです。
退場するTAKAHIRO先生には賞賛の声が寄せられていました。
正直オープニングは高校の演劇部のようなものを見させられたんですけど、最後はもう現代芸術の高みにまで達していたような気がします。
あのWアンコールの何分かこそ、欅坂の本質が詰まっていたような気がしました。
あの日、幕張メッセにいたすべての人が目撃者となり、ある種の共犯者のような一体感を持ってしまったんじゃないでしょうか。
まさに“魔曲”不協和音。
そしてそんな怖いもの見たさに、また欅坂のライブに足を運んでしまうのかもしれません。